書評 「陸王」 ★★★★★
久しぶりに涙を流して読んだ本。
ストーリーとしてはそれほど珍しくない、中小企業が困難にぶつかりながら、成長していくものであるが、登場人物一人ひとりのキャラクター設定、モノづくり企業なので当然なのだが手作り感が涙を誘う。
僕は以下の3シーンに心揺さぶられた。
・茂木選手に手書きのメッセージを添えて陸王をプレゼントするシーン。 社長とトレーナーだけで動いていたかと思えば、現場のメンバー達からの手書きメッセージは心に訴える。このアナログ感がたまらない。
・茂木選手の快走シーン ケガを克服しきっているかわからない状態で走る茂木選手の快走シーン。茂木選手の回想を合わせた快走シーンがとにかくお勧め。
・「馬鹿にしないでいただきたい」 社長が会社の身売りを検討しているときの一言。基本的に感情移入をしながら読んでしまうが、会社の経営の岐路に立たされているとき、弱気になりそうだが、この一言に魂をみた。
裏で支え続けた特許保有の顧問の存在や息子大地の就活を含めた成長等、読みどころ満載の陸王。さすがの池井戸シリーズ。心が乾き気味の人に届けたい。